VOMS実施のタイミング:ベースラインとプレテスト

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こんにちわ、爪川です

今回の記事ではVOMSと呼ばれる目の動きやバランス機能をチェックするテストに関して、「あれ?ここわかりにくいかも?」という箇所がありましたので、それを解説していきます

その「わかりにくかも?」と思った箇所はVOMSを実施するタイミング」です

VOMS実施のタイミング:ベースラインとプレテスト

ベースラインの誤解

VOMSとはVestibular/Ocular Motor Screeningの略です。目の動きやバランス機能をチェックするテストで、脳振盪の評価によく用いられます

そして他に脳振盪の評価に用いられるテストにはSCAT5(スキャットファイブ)があります

これらのテストを実施するタイミングですが、SCAT5は脳振盪を受傷する前に検査を行い、そして脳振盪後に再度検査を行う事で「脳振盪前後の差」を比較します

この中でも脳振盪を受傷する前に行う検査を「ベースライン」と呼びます

一方で元々のVOMSの使用方法は、脳振盪が起きた後にVOMSを行います(参照資料1)

脳振盪が起きた後にVOMSを行い、検査中の脳振盪の症状悪化の有無や程度を評価します

つまりVOMSを行うときは、「VOMSの前の脳振盪の症状はどうか?」そして「VOMSの後の脳振盪の症状はどうか?」を比較します

ただしここでややこしいのが、VOMSを行うときに使用する書式では「VOMSの前の脳振盪の症状はどうか?」の部分が「ベースライン」と表現されている点です

ここで言う「ベースライン」とは「脳振盪が起きた後で、VOMSを行う前」のことを指します

それ故にSCAT5でのベースラインである「脳振盪が起きる前」とは意味が違います


VOMSのベースラインとプレテスト

先ほど元々のVOMSの使い方は脳振盪が起きた後に実施すると述べましたが、脳振盪前にVOMSを実施しておき、脳振盪後に再度検査をしてその差を比較することが悪いわけではありません

現に脳振盪の前後でVOMSを行ってその差に関する研究をした論文はいくつもあります(参照資料2,3,4)

そして「ベースライン」という単語の使い方を明確にする為に、VOMSの検査でも脳振盪前の状態をベースライン、脳振盪後でVOMS前の状態をプレテストと表現する場合があります

脳振盪前の状態→ベースライン(SCAT5、VOMS)

脳振盪後でVOMS前の状態→プレテスト(VOMS)

ここでふと疑問が湧きます

VOMSはベースライン(脳振盪前)を行う必要があるのでしょうか?

SCAT5は脳振盪前後で身体の状態の差を比較しますが、VOMSは元々は脳振盪後にVOMS前後で症状悪化の有無や程度を比較します

もしVOMSもベースラインを行うことで何かしらのメリットがあるのであれば実施した方がいいかもしれません

ですがそうでない場合は、時間や労力の無駄を避ける為にもVOMSはプレテストだけでもいい可能性があります

VOMSのベースラインの必要性

結論から申し上げると、個人的には「VOMSのベースラインの必要性は低い」と考えています

その理由はとしては、

①VOMSという検査の性質上、脳振盪の症状の悪化や誘発があるかを検査するので、プレテストだけでもその目的は達成される

②ベースラインを行なっても脳振盪の評価がより有効になるわけではない可能性が高い(参照資料2)

③ベースラインでは所属する選手全てを検査する必要があり、労力・時間・経済的に負担が大きく現実的ではない可能性がある

特に部員が何十人にもなる部活動においてでも、アスレティックトレーナーやトレーナーが試合の時だけ帯同する場合もあると思います。そういったケースではVOMSのベースラインを取得しておくことは難しく、脳振盪後にだけ実施するという方が現実的だと考えます

まとめ

今回のまとめです!

  • VOMS(Vestibular/Ocular Motor Screening)は脳振盪の評価を行うときによく用いられるツール
  • VOMSは脳振盪後に実施し、VOMSによる脳振盪症状の悪化などをVOMS前後で比較する
  • 脳振盪の前に行う検査をSCAT5ではベースラインと呼ぶが、VOMSにおけるベースラインと違う場合があるので注意
  • VOMSを脳振盪前に行う必要性は議論の余地ありと考える

参照資料

1 Mucha A, Collins MW, Elbin RJ, Furman JM, Troutman-Enseki C, DeWolf RM, Marchetti G, Kontos AP. A Brief Vestibular/Ocular Motor Screening (VOMS) assessment to evaluate concussions: preliminary findings. Am J Sports Med. 2014 Oct;42(10):2479-86. doi: 10.1177/0363546514543775. Epub 2014 Aug 8. PMID: 25106780; PMCID: PMC4209316.

2 Ferris LM, Kontos AP, Eagle SR, Elbin RJ, Collins MW, Mucha A, McAllister TW, Broglio SP, McCrea M, Pasquina PF, Port NL. Utility of VOMS, SCAT3, and ImPACT Baseline Evaluations for Acute Concussion Identification in Collegiate Athletes: Findings From the NCAA-DoD Concussion Assessment, Research and Education (CARE) Consortium. Am J Sports Med. 2022 Mar;50(4):1106-1119. doi: 10.1177/03635465211072261. Epub 2022 Feb 18. PMID: 35179972.

3 Eagle SR, Ferris LM, Mucha A, Sinnott A, Marchetti G, Trbovich A, Port N, Clugston J, Ortega J, Collins MW, Broglio SP, McAllister T, McCrea MA, Pasquina P, Kontos AP, Investigators CC. Minimum detectable change and false positive rates of the vestibular/ocular motor screening (VOMS) tool: an NCAA-DoD care consortium analysis. Brain Inj. 2021 Nov 10;35(12-13):1563-1568. doi: 10.1080/02699052.2021.1973561. Epub 2021 Sep 20. PMID: 34543099.

4 Glendon K, Blenkinsop G, Belli A, Pain M. Does Vestibular-Ocular-Motor (VOM) Impairment Affect Time to Return to Play, Symptom Severity, Neurocognition and Academic Ability in Student-Athletes following acute Concussion? Brain Inj. 2021 Jun 7;35(7):788-797. doi: 10.1080/02699052.2021.1911001. Epub 2021 Apr 24. PMID: 33896286.

5 Kontos AP, Eagle SR, Marchetti G, Sinnott A, Mucha A, Port N, Ferris LM, Elbin RJ, Clugston JR, Ortega J, Broglio SP, McAllister T, McCrea M, Pasquina P; CARE Consortium Site Investigators; Brooks A, Buckley T, Mihalik J, Miles C, Collins MW. Discriminative Validity of Vestibular Ocular Motor Screening in Identifying Concussion Among Collegiate Athletes: A National Collegiate Athletic Association-Department of Defense Concussion Assessment, Research, and Education Consortium Study. Am J Sports Med. 2021 Jul;49(8):2211-2217. doi: 10.1177/03635465211012359. Epub 2021 May 12. PMID: 33979240.

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