スポーツ中の脳振盪とは?

音声版

こちらで同じ内容を音声のみで説明しています

文字を読むことで脳振盪の症状が悪化する方は是非ご利用ください

スポーツ中の脳振盪

脳振盪とは?

スポーツ中の脳振盪とは正確には

スポーツ関連脳振盪(Sports-Related Concussion)」

と言われます

このブログサイトではあえてスポーツ中の脳振盪と表現していますが、そちらの方が一般の方にも分かりやすいかと思い「スポーツ中の」という言葉を使っています

脳振盪とは頭や脳の怪我の分類である頭部外傷の1つです

ただ他の頭や脳の怪我である「頭蓋骨骨折」や「脳内出血」などと違い、脳振盪が起きると脳の中でどういったことが起きているのかはまだ完全に解明されていません

例えば脳振盪ではCTやMRIで脳内に出血が確認されることは基本的にありません

骨折や捻挫などでは損傷した部位から出血して腫れることなどが起きますが、脳振盪はそうゆうわけではありません

ですが脳振盪が起きると頭痛や吐き気、めまい、バランス感覚の低下、睡眠障害、感情的になる、記憶障害などが起こるような症状が現れます(詳細な症状の記載は下記にあります)

ゆえに脳振盪は脳の機能に影響を与えると考えられています

どうやって起きる?

スポーツ中の脳振盪は

頭に衝撃が加わる

ことによって起こります

ただし頭以外の

身体への衝撃が頭に伝わっても起こります

つまり、一見頭は打っておらず胸や下半身に衝撃が加わったとしても、その衝撃が頭に伝わって脳が揺れれば脳振盪は起こります

スポーツ中の脳振盪が起きるとどうなる?

レッドフラッグ

レッドフラッグ(Red Flags)とは英語では「危険、警告」というような意味があります

そしてスポーツ中に頭部へ衝撃が加わる/伝わるとレッドフラッグと呼ばれるような症状や兆候が出ることがあります

レッドフラッグの症状や徴候があればスポーツの試合中でも練習中でもすぐに中止し、

救急車を呼ぶ必要があります

以下の症状と症候がレッドフラッグとなります

1 首の痛み・首を押した時の痛み(圧痛)

2 複視(物が二重に見える)

3 手足の脱力やしびれ、灼熱感(燃えるような感じ)

4 強い頭痛やその増悪(次第に悪くなっていく頭痛)

5 発作やけいれん

6 意識消失(意識を失うこと)

7 意識障害(もうろうとしているような状態など)

8 嘔吐(吐くこと)

9 落ち着きがなく興奮したり、かんしゃくを起こす

脳振盪の症状と徴候

スポーツ中の脳振盪ではさまざまな症状と徴候が見られます

一般的に良くみられる症状と徴候は以下の通りですが、これら以外は見られないということではありません

頭痛頭がしめつけられる首が痛い吐き気がある
吐いた
めまいがする
ぼやけて見えるふらつく光に過敏音に過敏動きや考えが
遅い
霧の中にいる
ような感じ
何かおかしい集中できない覚えられない疲れる
やる気が出ない
混乱している眠気が強いいつもより
感情的
いつもより
イライラする
理由なく悲しい
心配・不安眠れない
寝付けない
参照資料2より

初期対応の重要性

脳振盪が疑われた選手は

すぐに試合や練習を離脱

医療従事者やアスレティックトレーナーの指示に従うことが最重要です

脳振盪かどうかの判断は医療従事者やアスレティックトレーナーは行うべきであり、「本人が大丈夫と言っている」というような主観的な判断は非常に危険です

また、1回目の脳振盪を受傷しても当日そのままプレイを続けたり、適切な診断や治療・リハビリをしないでスポーツに復帰すると、再度頭部への衝撃が加わった際は生死に関わることがあります

生死に関わる以外でも強い後遺症が残ったり、脳振盪の症状が長引く可能性もあります

これらの危険性に関してはあるアメリカ人女性がご自身の体験記を発表しており、その日本語訳をブログ記事にしておりますのでこちらをご覧ください

また脳振盪を受傷した選手は常に誰かに見守られている必要があります

脳振盪の症状は急激に変わる場合もあります

それゆえ脳振盪受傷者を1人にしておくのは非常に危険です

脳振盪受傷後の注意点

脳振盪受傷者を1人にしない、1人で帰宅させない(常にコーチやチームメイト、家族が見守れる環境にいる)

医師の許可があるまでは運転しない

医師の許可があるまでは飲酒しない

医師の許可があるまでは薬の服用はしない(痛み止めや市販薬も含む)

受傷直後はスマホ、テレビ、ネット、読書、勉強、遊びに出かけるなど脳に負担がかかることは避ける

脳振盪後はどうするのか?

いつスポーツに復帰出来る?

脳振盪を受傷した選手の70-80%は成人なら2週間、子供なら4週間でスポーツに復帰しています

ただ、これらは統計上の数字なのでこれよりもスポーツ復帰に長くかかる場合もあります

どうしたらスポーツに復帰出来る?

脳振盪受傷後、成人なら2週間、子供なら4週間ほどで7-8割の方はスポーツに復帰していきますが、これは2週間や4週間の間は安静にしているべきというわけではありません

脳振盪を受傷した後は体調や症状に応じて少しずつリハビリを行っていくことが非常に重要です

このリハビリの過程は『段階的競技復帰』と呼ばれます

また、学生や子供の場合はスポーツや運動に復帰する前に学校生活を問題なく過ごせるように回復する必要があります

この学校生活までの復帰過程は『段階的学業復帰』と呼ばれます

段階的学業復帰

段階的学業復帰とは子供や学生が脳振盪を受傷した時に、学校生活に適切に復帰する為の取り組みや過程のことを指します

この『段階的学業復帰』は段階的競技復帰よりも先に開始されます

ですので、段階的学業復帰を行って学校生活(体育や部活以外)が問題なく過ごせるようになったら段階的競技復帰の取り組みを始めます

段階的学業復帰への過程は4つのステージから成り立っています

ステージ目的内容目標
症状が悪化しない
自宅での日常生活
症状の悪化が伴わないごく日常的な
活動の実施(読書やスマホなど)
5-15分から始めて徐々に長くしていく
徐々に日常生活に
復帰
学業への復帰宿題や教科書を読むなど、
教室外での学業を実施
認知機能の
活動量を上げる
部分的な
学校生活への

復帰
徐々に教室内での活動を増加
症状などに応じて早退や休憩時間を

増やすなどの工夫が必要
学業活動の増加
学校生活への復帰通常の学校生活に戻るまで
徐々に活動量を増加
通常の学校生活に戻り
学業の遅れを取り戻す
段階的学業復帰

段階的競技復帰

段階的競技復帰は6つのステージに分けられており、それぞれのステージをクリアしたら次のステージに進んでいきます

脳振盪の症状の悪化や再発がなく全てのステージを上がっていければ通常の練習や試合に復帰していきます

ステージ目的内容目標
症状が悪化
しない程度の
日常生活
症状の悪化が伴わない
ごく日常的な活動の実施
徐々に日常生活に復帰
2軽い有酸素運動軽〜中負荷でのウォーキングや
エアロバイクの実施
レジスタンストレーニングは行わない
心拍数の上昇
スポーツ特有の
動作
スポーツ特有の動作の実施
ランニングやスケート、
ただし頭部への衝撃が

伴わないものに限る
動きの増加
非接触の
練習参加
パス練習など接触を
伴わない練習への参加
レジスタンストレーニングも
徐々に開始していく
運動やコーディネーション、
判断力の増加
接触有りの
練習参加
医師の許可のもと、通常の練習参加自信の回復
コーチによるスキルの確認
競技復帰試合に復帰
段階的競技復帰

段階的競技復帰の各ステージの間は24時間以上空ける必要があります

1つのステージの内容を行い翌日以降に脳振盪の症状や徴候がなければ、次のステージの内容を行います

ですので、1日で2つのステージを終了することは出来ません

脳振盪後症候群

脳振盪後症候群とは一般的な脳振盪の回復期間(大人は約2週間、子供は約4週間)以上に脳振盪の症状が長引いている状態を指します

英語ではPost-Concussion SyndromesやPersistent Post-Concussive Symptomsと呼ばれます

脳振盪後症候群は非常に複雑な障害で、1つの原因が脳振盪後症候群を引き起こしているわけではなく、様々な原因が絡み合うことによって起こると考えられています

その原因は脳振盪自体の衝撃もありますし、脳振盪受傷前から患っていたもの(例えば偏頭痛など)も関係しています

脳振盪後症候群の検査は非常に多岐にわたり、治療方針やリハビリは完全に個人別で設計される必要があります

治療やリハビリの例は以下となります

・厳格に管理された有酸素運動

・前庭機能や眼球機能の改善

・頸部のリハビリ

・認知・精神療法

また、最近では食事療法や徒手療法(マニュアルセラピー)なども総合してリハビリを組み立てる例もあります

参照文献

1 Consensus statement on concussion in sport-the 5th international conference on concussion in sport held in Berlin, October 2016

2 Sport Concussion Assessment Tool 5th edition

3 Case report: Manual therapies promote resolution of persistent post-concussion symptoms in a 24-year-old athlete

4 Concussion Care: Moving Beyond the Standard

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