脳振盪のチェックによく使われるテスト

基礎知識

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はじめに

こんにちわ、爪川です

スポーツで脳振盪が起きた場合、脳振盪のチェックに使われるテストはいくつか種類があります

脳振盪のチェックは1つのテスト結果だけで終わることはなく総合的に行われますが、『そもそもどんなテストがあるのか』ということを今回の記事では簡単にまとめてみようと思います

脳振盪のチェックによく使われるテスト

主なもの

SCAT 5

参照資料1より

SCAT5(Sport Concussion Assessment Tool Edition 5)、日本語では『スキャットファイブ』とよく呼ばれていますが、これはスポーツでの脳振盪を評価する際に使用されるツールの中では一番一般的なものかと思います

SCAT5は専用の用紙といくつかの器具(ストップウォッチやテープなど)があれば実施可能です

患者の自覚症状や認知能力、バランス機能、記憶能力、運動機能チェックなどをチェックします

2004年に行われた第2回目の脳振盪の国際学会で初めてSCATが発表され、その後SCATは改訂されていき現在の最新版はSCAT5になります(2022年8月時点)

2022年10月には第6回目の国際学会がありますので、そこで新しいSCATが発表されるかもしれません

SCAT5の日本語版は日本サッカー協会のホームページに掲載されています↓

https://www.jfa.jp/football_family/pdf/medical/b08_02.pdf

また、国立スポーツ科学センターのホームページにSCAT5のやり方の動画が掲載されています↓

SCAT5
参照資料5より

なお、SCAT5には年齢制限があります

13歳以上はSCAT5を実施し、12歳以下はChild SCAT5(小児スキャット5)を実施します

Child SCAT5は日本語版が見当たらなかったので、英語版となりますが添付しておきます↓

https://bjsm.bmj.com/content/bjsports/early/2017/04/26/bjsports-2017-097492childscat5.full.pdf

ImPACT テスト

参照資料3より

ImPACT テスト(インパクト)はパソコンで行われる脳振盪の検査ツールです

ImPACTはImmediate Post-Concussion Assessment and Cognition Testの略です

2002年にアメリカで誕生した脳振盪検査ツールで、おそらくパソコンを用いて脳振盪のチェックをするツールとしては一番名前が広がっているのではないかと思います

ImPACTテスト購入後にパソコンの画面上で日本語の設定もできるので、英語が読めない患者にも使用できます(管理者の操作画面は確か英語のみだったので、その部分は英語能力が必要です)

公式ホームページに掲載されているImPACTテストのデモ動画です(英語)↓

ImPACT – FDA Cleared Concussion Management Aid

チェック項目は脳振盪の症状の他にも、記憶能力、反応速度、認知能力なども含まれます

パソコンでのテストの為、客観的に患者の状態をチェックしやすく、また脳振盪受傷前後のデータとの比較も行いやすいです

ImPACTテストを行うにはパソコンとマウス、それにImPACTテストのソフトを購入する必要があるので、ある程度資金があるスポーツチームや学校などでないと導入は難しいかもしれません

ImPACTテストの価格も公式ホームページに掲載されています↓(英語)

Pricing | Concussion Management | ImPACT Applications Inc.
ImPACT Applications concussion assessment tools are affordably priced and accommodate different types of organizations. Learn about our pricing tiers. Feel free...

VOMS

参照資料4より

VOMSとはVestibular/Ocular Motor Screeningの略で、『目の機能』や『目とバランス能力の機能』をチェックするツールです

日本語では『ボムス』と呼ばれることが多いかなと思います

このテストも専門の用紙とペン、それに手軽な器具(メトロノームなど)があれば実施可能なので、スポーツ現場でも行いやすい種類かと思います

このボムスの測定方法の説明動画も国立スポーツ科学センターのホームページに掲載されています↓

VOMS
参照資料5より

ここでふと思いましたが、ボムスの用紙は英語ではありますが日本語版って見当たらないですね、、、

まあ専門用紙ではなく記録さえ出来てしまえばどんな紙でも実質大丈夫なんで、大きな問題にはならないと思いますが(参考程度でいいなら自分でやろうかな?)

King-Devick Test

King-Devick TestはKD(ケーディー)テストと略して呼ばれます

現在のKDテストはタブレットで出来るようになっていますが、最初は専門用紙と紙、それにストップウォッチなどの機材があれば実施可能なテストでした

タブレットでのKDテストは多少違うかもしれませんが、基本的なテスト内容は紙面上に書いてある数字の羅列を音読していき、それに要した時間や間違いを測定していくテストです

KDテストの公式ホームページに動画での説明が載っています

3分47秒ぐらいから再生してもらえれば、『数字の羅列を読み上げる』というのがイメージしやすいかと思います

King-Devick Test in association with Mayo Clinic Sideline App Tutorial Video
参照資料6より

バッファロー脳振盪トレッドミル・バイクテスト

バッファロー脳振盪トレッドミルテスト・バイクテストはこのブログでも度々取り上げています

このどちらのテストも国立スポーツ科学センターのホームページにて実施方法や目的などが動画で掲載されています

バッファロー脳振盪トレッドミルテスト(BCTT: Buffalo Concussion Treadmill Test)の動画↓

BCTT
参照資料5より

バッファロー脳振盪バイクテスト(BCBT: Buffalo Concussion Bike Test)の動画↓

BCBT
参照資料5より

これらのテストに関してはブログでも過去にまとめていますので、そちらをご確認ください

バッファロー脳振盪身体検査

参照資料8より

バッファロー脳振盪身体検査(Buffalo Concussion Physical Examination)は上記のトレッドミル・バイクテストを考案したアメリカのUniversity at Buffaloのチームが考案した検査です

この検査についての詳細も以前の記事でまとめてあるので、そちらをご覧ください

The Rivermead Post-Concussion Symptoms Questionnaire (RPQ)

参照資料8より

このテストはよく研究論文を読むと見ることが多いですが、1995年に考案された脳振盪や頭部外傷後の症状の強さを測る検査です

基本的には患者の自覚症状を聞く内容となっており、専門用紙とペンがあれが実施可能です

(日本語では「リバーミード」と個人的に呼んでいますが、合っているかは不明です)

このテストの無料でダウンロードできますのでここに添付しておきます↓(英語のみです)

The Rivermead Post-Concussion Symptoms Questionnaire, version from N.S. King et al, 1995

その他

詳細は省きますが上記のテスト以外にもよく実施されるテストやチェックされる項目です↓

  • 脳神経機能
  • 頚椎や胸郭の状態(可動性、安定性、筋緊張、圧痛など)
  • 心拍変動
  • 原始反射
  • 食事/便通
  • 呼吸パターン、数、頻度

参照資料

1 公益財団法人日本サッカー協会 SCAT5 日本語版

2 British Journal of Sports Medicine Child SCAT 5

3 ImPACT testing

4 Vestibular/Ocular Motor Screening

5 国立スポーツ科学センター ハイパフォーマンスセンター 脳振盪の啓発(けいはつ)コンテンツ

6 KING-DEVICK TECHNOLOGIES

7 Haider MN, Leddy JJ, Du W, J Macfarlane A, Viera KB, Willer BS. Practical Management: Brief Physical Examination for Sport-Related Concussion in the Outpatient Setting. Clin J Sport Med. 2020 Sep;30(5):513-517. doi: 10.1097/JSM.0000000000000687. PMID: 30418199; PMCID: PMC6504626.

The Rivermead Post-Concussion Symptoms Questionnaire, version from N.S. King et al, 1995

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