Exercise is Medicine for Concussion

リハビリ

アメリカ産アスレティックトレーナー(ATC)
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※この記事は以前noteに掲載したものです

今回はスポーツ中の脳震盪に関しての2018年発表の論文を読んでのまとめです

論文のタイトルは”Exercise is Medicine for Concussion”

“Exercise is Medicine”(運動は医療だ)とはアメリカなどで言われている言葉で、運動をすることによる健康への好影響を意味して使われている言葉です

”運動は薬以上に効果もあるし、費用も低いから健康のために運動しましょう!”というようなメッセージがあります(アメリカは肥満人口も非常に高くなってきているので、このメッセージは切実です)

“Exercise is Medicine for Concussion”とは、この場合は元々の”Exercise is Medicine”と似たような意味で使われています。つまり”脳震盪にも運動は医療になる”という様な意味です

この論文の発表元はState University of New York at Buffaloというアメリカのニューヨーク州の学校です。脳震盪リハビリに詳しい方はご存知かもしれませんが、Buffalo Concussion Treadmill Test (BCTT)を考案した大学です

スポーツ中の脳震盪では、頭痛やめまい・吐き気などの症状が長期間続く場合があります。その原因は前庭機能や動眼機能の低下、頸部の過緊張などもありますが、自律神経の機能が低下し運動時に血圧や脈のコントロールがうまく機能しなくなる場合もあります。BCTTではこのような運動時の自律神経の機能低下による脳震盪後の症状がある方に行われ、シンプルに言えば症状が悪化しない程度でランニングマシンを使用して運動を行い、徐々に運動中の脈や血圧の変化に身体を慣らしていくような運動プログラムです

この論文で言われている要点は2つあり、

1つ目はスポーツ中の脳震盪が起きた後は、現在行われている安静期間よりも早く運動を開始したり、社会や学校での”社会生活”をしたほうが症状の回復が早い可能性がある

2つ目は、スポーツ中の脳震盪からの復帰を目指す際は、”運動を薬のように個人の症状にあわせて処方する”ことに関しても考えるべきである

大きくは上記の2点を言っています。

スポーツ中の脳震盪があれば、通常であれば安静時に症状(頭痛や吐き気)が消失するまでは心拍数が上がるような事(運動など)や、集中して頭を使うような事(学業など)は避けるべきと言われています

脳震盪で脳の機能低下を起こしている最中にそれらのことを行うと、さらに脳に負担がかかり症状を悪化させてしまう場合があるからです(例えで言うと、打撲した箇所を次の日にまだぶつけてしまうような状況です)

ただ、では安静時の症状がなくなるまでずっと運動も頭を使うこともすべきでないのか?、と言うとそうではなく、いつまで休むべきと言うのは明確な答えはまだわかりません

2017年に発表された国際的な脳震盪に関する声明でも、”complete rest(完全に休養する事)”が脳震盪後の回復を促進するかどうかの科学的証拠は乏しいとしています

現にネズミを使った実験では、人工的に脳震盪を受傷させてから、運動と他のネズミとの交流を遮断したネズミ群と、自発的な運動を許可したネズミ群では、後者の方が脳震盪からの回復が早いという結果が出ています(他の研究では、強制的に運動させたネズミ群では回復が遅いこともあり、あくまで”自発的な運動”が効果があるのではないかと考えられています)

人間でも似たような報告もありますが、まだ研究が十分でなくはっきりとしたことは言えない、というのが正直なところです

脳震盪は脳の代謝や生理機能に影響を及ぼし、自律神経の機能低下などを引き起こします。自律神経は血中の二酸化炭素の量によって脳への血流量をコントロールしていますが、研究では運動時にこの血中の二酸化炭素への反応が以上に強くなり、運動時の脳への血流が異常に多くなる事が頭痛などの症状につながっているのではないかと考えられています

このような場合では、運動をまったくしないよりも運動をできる範囲で徐々に行い、心拍数の増加や血中の二酸化炭素量の増加に身体を慣らしていく事が大事であり、「どの程度の運動が必要なのか」という処方を行う必要があることも言っています(この様な場合は上記のBCTTが有用になります。BCTTではどの程度の心拍数で始めて、どの程度のスピードで負荷を増やすかなどを決めます)

ただ、スポーツ中の脳震盪による症状の原因は多岐に渡り、このように自律神経や生理機能によるものもあれば、バランス感覚や視覚などの問題、首の筋肉や関節によるものもあります。そしてほとんどの場合では、原因は1つではなく、複数の原因から症状が出ています

この論文でも、症状の原因が何かを鑑別する必要性も指摘しており、ただ単純に運動に慣らしていけばいいと言うわけでもありません。先にバランス感覚などの機能を改善する必要がある方もいれば、視覚機能のリハビリを優先すべき場合もあります

脳震盪後のリハビリでは、受傷してから安静時の症状がなくなるまでは休養し、それから色々なチェックを行って機能低下している部分のリハビリをする、というのがスタンダードかと思います

ただ、今の脳震盪の研究の流れでは、この論文の様に「受傷からこの程度の期間は完全に休養した方がいいけど、この程度の期間が経過してこの様な条件であれば運動をした方がいい、その場合の運動はこうこうこうで、、、」ということが明らかになっていくのではないかと思います(あくまで個人的な考えです)

参照文献

exercise is medicine for concussion.pdf

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