ラグビーW杯 2015 怪我の統計

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はじめに

※この記事は以前noteに掲載したものです

こんにちわ、爪川です

今回は2015年のラグビーW杯での怪我の統計をまとめた論文について見ていきます

2015年なので昨年日本で行われた大会より1つ前、イングランドで行われて日本が初戦で南アフリカに勝利した大会です

ラグビーW杯 2015 怪我の統計

この大会期間中に試合やその間の練習でどの様な怪我が起きたか、試合や練習ではどうだったかなどをまとめています

ラグビーではポジションを大まかにFW(フォワード)とBK(バックス)に分けてますが、この文献でもこの2つに大別してまとめています

基礎情報

  • 期間:2015年9月14日から2015年10月31日
  • 試合数:48試合
  • 試合での怪我:173件(FW83件、BK90件)
  • 練習での怪我:20件 (FW12件、BK8件)

試合で起きた怪我の中で最も頻繁に起きた怪我 上位6つ

  1. 脳振盪:24件
  2. 膝の靭帯損傷:17件
  3. ハムストリングス損傷:16件
  4. ふくらはぎ損傷:7件
  5. 大腿四頭筋の打撲:7件
  6. 足首の捻挫:5件

※脳振盪の24件の内、18件が受傷してからすぐにフィールドから退場して脳振盪の診断が下され、残りの6名は試合後に症状が発症した
※膝の靭帯損傷は内側側副靭帯が9件、前十字靭帯が5件、後十字靭帯が1件、外側側副靭帯が1件、後外側複合体が1件

試合で起きた怪我の中で最も離脱期間が長かった怪我   上位6つ(平均日数)

  1. アキレス腱損傷:188日
  2. 肩の脱臼:161日
  3. 膝の靭帯損傷:89日
  4. ハムストリングス損傷:42日
  5. 大腿四頭筋損傷:42日
  6. 脳振盪:8日

試合で怪我が起きたシチュエーション 上位5つ

  1. タックルされた時:24.7%(FW: 17.1%, BK: 31.8)
  2. タックルした時:21.2% (FW: 22.0%, BK: 20.5%)
  3. ランニング:18.2% (FW: 18.3%, BK: 18.2%)
  4. 衝突:17.1% (FW: 13.4%, BK: 20.5%)
  5. ラック:5.9% (FW: 9.8%, BK: 2.3%)

練習で起きた怪我の内訳(総数20件)

  1. 下半身:16件
  2. 体幹:2件
  3. 上肢:1件
  4. 頭部・頸部:1件

※練習で起きた怪我は総数が少ない為、詳細な分析は行われませんでした

感想

試合時の怪我の数としては脳震盪が一番多くなりました。これは2007年、2011年のラグビーW杯と比較しても数は増加傾向だとの事です。これは脳震盪疑いの選手をいち早く見つける事が可能になってきた(HIAというシステムなど)ことも関係あるのかもしれません。脳震盪による平均離脱日数はこの大会では8日で、大人は受傷から7-14日以内に回復する場合が多いと言われているので、この期間内に全員が復帰した様です。ただ、脳震盪は数ヶ月症状が残る場合や適切なリハビリが行われないと再受傷するリスクも高くなるので、常に注意は必要です。特に高校生以下はまだ脳が発達途中なので、受傷してから最低1ヶ月はスポーツ復帰に要すべきと言われています。

膝の靭帯損傷やハムストリングス損傷が件数や離脱日数ともに上位になり、これらの怪我が選手やチームに与える影響は大きい様です。これはW杯に参加するチームだけでなく、おそらくどのカテゴリー(トップリーグ、大学、高校など)でも同じ様な傾向なのではないかと思います。この論文のまとめにもありますが、効果的な予防プログラムなどの実施や確率が必要となってきます(これは前から言われいることではありますが)

参照文献

Fuller CW, Taylor A, Kemp SP, Raftery M. Rugby World Cup 2015: World Rugby injury surveillance study. Br J Sports Med. 2017 Jan;51(1):51-57. doi: 10.1136/bjsports-2016-096275. Epub 2016 Jul 26. PMID: 27461882.

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