脳振盪への栄養戦略④

リハビリ

※この記事は以前noteに掲載したものです

こんにちわ、Calantスポーツリハビリ&パフォーマンスの爪川です

スポーツ中の脳震盪:栄養面からのサポート、1週間に1回の連載も4回目となりました

今回参考にする文献はこちら↓

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この文献内では様々な栄養素に関して述べられているので最初からこれだけまとめていればわざわざ連載企画などしなくてもよかったのですが(苦笑)、少しずつ多くの文献を読んだ方が知識の定着にもなるかと思い4回目にてのご紹介となります

この文献内では「栄養素がどう脳震盪や頭部外傷に効果があるか」の他にも、「脳震盪が起こった際の脳の代謝異常やその内容」、「特に神経細胞へのエネルギーの需要と共有のアンバランスが如何にして発生するか」などの詳細な記述もあります

ただ今回は「栄養素がどう脳震盪や頭部外傷に効果があるか」についてまとめていきたいと思います

文献内では多くの栄養素に対して、頭部外傷や脳震盪の研究などでどのような効果が見られているかを述べています

このブログ内では以下の栄養素についてまとめようと思います

タンパク質
BCAA
クレアチン
DHA
ビタミンD
チアミン(ビタミンB1)
ナイアシン(ビタミンB3)
鉄分

1 タンパク質

脳震盪後では脳血流の低下などから脳のエネルギー需要と供給のバランスが崩れます。これによりプロチアーゼ(タンパク質を分解する酵素の総称)の活性化やアポトーシスが起こり、タンパク質合成を阻害します

タンパク質合成が阻害されれば、体内でうまくタンパク質を作り出すことが出来ません

さらにタンパク質の分解は脳震盪受傷後2時間以内には発生し始めることが確認されており、BCAA/ヒスチジン/メチオニンは怪我の2ヶ月後でも数値が低くなる場合があると報告されている(BCAA、ヒスチジン、メチオニンは必須アミノ酸であり、体内で合成することが出来ません)

ある研究では健常者と頭部外傷患者を7時間絶食させた後でタンパク質の分解度具合を測ったところ、頭部外傷患者ではタンパク質分解が顕著に高かったとの報告もあります

タンパク質分解及びそれに付随する低アルブミン状態により、ミネラル(亜鉛や鉄)の可用性に悪影響を及ぼし、酸化ストレスのさらなる悪化を招きます

それゆえにタンパク質の分解・合成のバランスを戻すことは酸化ストレスを低下させ、脳震盪からの回復を促進させる可能性があります

上記に対処するためにも、脳震盪患者にタンパク質の摂取を増やすのは理にかなった栄養戦略と文献では述べています

2 BCAA

BCAAは先ほども出てきましたが、BCAAはタンパク質を構成する必須アミノ酸の1つで、神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなど)などの重要な前駆体として機能している

脳震盪後ではBCAAは容易に酸化されてしまい、多くの研究で脳震盪患者はBCAAの数値が低いことが報告されています

マウスを使った実験ではBCAAを投与すると、シナプス効率と海馬機能の改善、それによる認知機能の改善が見られたとの報告があります

3 クレアチン

クレアチンは筋肥大の為にアスリートにはよく摂取される栄養素として知られていますが、ADPからATPを作り出す物質として、理論的には脳震盪後のエネルギーバランス不全に対して有効ではないかと考えられています

MRSをを使った検査では、脳震盪前と比較して脳震盪後では脳内のクレアチンの量が低下していることがわかっています

クレアチンには抗酸化作用も持ち合わせている可能性も指摘されています

マウスを使った実験では、頭部外傷前にクレアチンを摂取しているとミトコンドリアの機能や副次的損傷を守る効果が示されました

人間の場合では重度の頭部外傷の鍵って言えば、認知機能の向上、頭痛とめまいの低下などの効果が示されています

4 DHA

オメガ3脂肪酸、特にその中でもDHAは多くの脳機能に関わっており、神経の炎症と酸化ストレスの低下などの作用があります

DHAと炎症マーカーの指標(体内の炎症具合を示す数値)は反比例の関係がわかっており、DHAが増えれば炎症マーカーが減り、DHAが減れば炎症マーカーは増えます

動物実験レベルでは数多くの研究でオメガ3脂肪酸を頭部外傷の前後で摂取することは脳へのダメージの保護、特に軸索への構造的なダメージと細胞のアポトーシスを減らす作用があることがわかっています

5 ビタミンD

ビタミンDは脳の成長、健康、機能に非常に強く関わっており、逆にビタミンDが欠乏している場合は炎症と細胞死を助長することがわかっています

頭部外傷後にビタミンDを摂取する事により炎症を引き起こす一連の反応を減少させることが確認されており、脳機能の改善も示されています

ただし、脳震盪後のビタミンDの有効性を評価した治験の報告はまだありません

6 チアミン(ビタミンB1)

体内(ミトコンドリアの中)にはTCAサイクル(クレブス回路やクエン酸回路とも呼ばれます)というエネルギーを作り出す機能があります

チアミン不足ではそのTCAサイクルの機能が低下し、エネルギー不足が最終的には細胞のアポトーシスに繋がります

TCAサイクルの機能不全はエネルギー生成低下の他にも、乳酸性アシドーシスを発生させます。この乳酸性アシドーシスは脳浮腫(脳の腫れ)、フリーラジカルの増加、酸化ストレスの増加を引き起こします

TCAサイクルへの影響以外にも、チアミンは脂質、ブドウ糖、アミノ酸、神経伝達物質の代謝に関わり、チアミンの不足は神経機能に非常に大きな影響があります

7 ナイアシン(ビタミンB3)

ナイアシンはNAD+という物質の前駆体であり、このNAD+は電子伝達系というエネルギー生成のシステムで必要な酵素です。このNAD+によりATPが生成出来ます

ナイアシンを摂取する事で頭部外傷後の副次的な損傷を軽減することが示されていますが、これは受傷後にATPの可用性を増加させる事と関係があると考えられています

ナイアシンの低下は細胞のアポトーシスと関係しており、理論的にはナイアシンを摂取することは細胞保護作用があります

8 鉄分

頭部外傷は鉄分不足と関係があり、頭部外傷による疲労感や筋力低下の症状を悪化させることが示されています

さらに鉄分はドーパミン生成にも関わっており、マウスの実験では鉄分不足ではドーパミンの再取り込みが阻害されることが確認されています

まとめ

この文献は広い範囲の栄養素に関してまとめられており、非常に勉強になりました

また、今回はまめとめませんでしたが、脳震盪後に起こる病理学なども詳細に記載されており、その部分を理解すると栄養素との関係性もよりわかりやすくなると思います

今回も最後までお読み頂きましてありがとうございました

参照文献

Nutrition as Medicine to Improve Outcomes in Adolescents Sustaining a Sports-related Concussion.pdf

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