脳振盪への栄養戦略② ビタミンD

リハビリ

※この記事は以前noteに掲載したものです

こんにちわ、Calantスポーツリハビリ&パフォーマンスの爪川です

今回の記事は連載企画の2回目、スポーツ中の脳震盪への栄養面からのサポート②:ビタミンD編です

今回参考にした文献はこちら↓

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2016年に発表されたレビュー文献です(レビュー文献とは1つのトピックに対する多くの研究を調べて、その中から適切な研究結果をまとめたようなものと思ってください)

前回の投稿の最後でも言及しましたが、ビタミンDは頭部外傷後に有益な栄養素の候補として挙げられています(因みにこの文献内では他の有益な候補として、オメガ3脂肪酸、クレアチン、BCAA、チアミン、亜鉛、マグネシウムを挙げています)

ビタミンDを摂取することによる神経保護(細胞保護)の効能は、外傷性・虚血性・興奮毒性・退行性・自己免疫性の脳の外傷/疾患の研究で報告されています

ビタミンDがどのようにして上記の効能があるのかはまだ確定的なことは不明ですが、現時点での可能性として以下のものが挙げられています

1 頭部外傷後の神経細胞の炎症反応の低下、その事による神経細胞のアポトーシスの減少(“reduce the inflammatory response following TBI”, “diminishes neuronal apoptosis and improves functional outcomes”)

2 神経細胞内へのカルシウム流入のグルタメート興奮毒性の最小化(”minimizes neuronal calcium influx and excitotoxic glutamate release”)

3 フリーラジカルスキャベンジャーを増やして酸化を低下(“increases free racial scavenging and decreases oxidative”)

4 微小管の保護及び軸索と神経細胞骨格の再生を促進(“enhance microtubule protection and regeneration of the axonal and neuronal cytoskeleton”)

5 神経細胞の生存、成長、機能に関わる神経成長因子などを増やす(“up-regulates neurotrophic growth factors and other markers involved in neuronal survival, development and function”)

(因みに頭部外傷後のビタミンDの投与・摂取に関しては多くの研究がなされていますが、その中でもビタミンDとプロゲステロン(Progesterone)というホルモンの1種との同時投与がより神経保護に働く報告がされています)

このレビュー文献では165の研究報告を精査し、その中からビタミンDと頭部外傷に関して適切(内容や実験方法など)と判断した5つの文献をまとめています。そのうち4つはラットを使った実験、1つは重度の頭部外傷後の人間の患者での研究です

ラットを用いた4つの研究を大まかにまとめると

・頭部外傷後に①ビタミンDのみ投与、②プロゲステロンのみ投与、③両方とも投与の3つを比較すると、全ての方法で炎症の低下や神経保護の効果が確認された

・頭部外傷前にビタミンDを欠乏させると、頭部外傷時の炎症や細胞死が悪化する

・頭部外傷前にビタミンDを欠乏させると、頭部外傷後にプロゲステロンのみ投与しても効果は確認できない(→ビタミンDとプロゲステロンを両方投与すると効果あり)

・頭部外傷後にプロゲステロンを一定量、ビタミンDを①少なめ/②中程度/③多めに投与すると、①少なめが一番効果が高い(少なめは体重1kg当たり1μg投与、中程度は2.5μg、多目は5μg)

人間が被験者の研究では、頭部外傷後に救急病院に運ばれた方を対象として①プロゲステロンのみ、②プロゲステロンとビタミンD、③偽薬(何の効果もない薬)の3つのグループで比較しました

この研究では人の意識レベルを評価するGlasgow Coma Scale(GCS)という評価方法で15点満点中8点以下、分類では重度の頭部外傷の患者のみ60名を対象としています

結果として、3ヶ月後の生存率や脳機能レベルは②プロゲステロンとビタミンDの両方とも投与されたグループが最も高くなりました

まとめ

今回のレビュー文献では頭部外傷後のビタミンDとプロゲステロンの投与はラットでも人間でも効果が期待できると結論づけています。ただし、著者達はまだ人間にその結果を応用するには時期尚早として、頭部外傷後や脳震盪後に回復を促すためのビタミンDの投与の推奨は現段階では出来ないとしています

確かにこれらの研究結果だけでは人に応用するのは早いのかもしれません

ただ、レビュー文献内の研究でもあったように、ビタミンDが欠乏している状態で頭部外傷が起こった場合、ビタミンDが十分にある場合と比較して血液中の炎症兆候などの指標は悪化します

ですので、脳震盪を含む頭部外傷が起きた後にビタミンDを摂取するのが良い、という事は現時点では言えないものの、健康な時からビタミンDが欠乏しないようにする、という事も大事になってきます

このレビュー文献自体は2016年に発表されたもので、今は新しい発見・研究も出ていると思います。今後の研究に期待です

参照文献

LawrenceBIVitaminDTBIreview.pdf

補足 毎日どの程度のビタミンDを摂ればいいのか?

どの程度のビタミンDを摂ればいいのか、というのはご自身の血中ビタミンDの濃度(25(OH)Dという指標)を知ることが出来れば1つの指標となります。その数値が低ければビタミンDを多く摂取し、次回に計測した時と比較する。数値が良ければ摂取量を維持する、悪ければもっと増やす、もしくは少なくしてみるなど、対策が立てられます(ビタミンDだけ摂取しても身体がそれを吸収出来ない状態であれば、まずはそれを改善する必要はありますが)

因みに文献内ではアスリートは血中のビタミンDのレベルが75 nmol/L以上というのが望ましいとされています

※ビタミンDに関してはこちらの情報も有益です(東京慈恵会医科大学付属柏病院のHPより)。ここでは一般人も75 nmol/L以上を正常値としています

ビタミンDの基礎知識(がんとの関連)|東京慈恵会医科大学附属柏病院
東京慈恵会医科大学附属柏病院

とは言っても、血中濃度は今すぐわかるわけでもないので、毎日の摂取量はどの程度が推奨されているのでしょうか?

このような場合は厚生労働省のページからまずは探すのがいいと思います

そうすると出てきたがこちら↓

厚生労働省eJIM | ビタミンD | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 一般の方へ | 「統合医療」情報発信サイトwww.ejim.ncgg.go.jp

ただし、これはアメリカのNIHという機関の情報を翻訳したもので、ビタミンDの推奨摂取量もアメリカ人を対象としたもの(しかも最終アップデートが2011年)

日本人を対象としたものを探すと見つかったのがこちら↓

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書www.mhlw.go.jp

この報告書の中からビタミンDの推奨量を読み解くと以下となります

成人 10μg (400IU)
65歳以上 8.5μg (340IU)
妊婦 7μg (280IU)
授乳中 8.5μg (340IU)

(サプリメントでは栄養素の含有量を”〇〇IU”と表示しますが、このIUとはinternational unitの略で、栄養素それぞれで□□gで△△IUと換算します。ビタミンDの場合は1μgが40IUです)

この報告書は十数人の研究者の方々がまとめたもので多くの科学的研究を基に提言されているのですが、個人的にはこの数字は少ないような気もします

というのも、今回のレビュー文献内では”ビタミンDの平均推奨量は定まったものがなく成人の推奨量は800-5,000IUと開きがあるが、多くの情報源は毎日1,000IUの摂取を推奨している。上限もはっきりと定まったものはなく、毎日10,000IUを長期間摂取しても問題なかったとの報告もある”との記述があります

厚労省の400IUと文献内の1,000IUでは大きな開きがあります

上述した東京慈恵会医科大学付属柏病院のHPでも、ビタミンDは実際は不足しているのではないかとの記載はあります

勿論、ビタミンDは日光に当たることにより体内で生成することが出来ますが(日焼け止めを塗ってあるとダメです)、欧米と日本では緯度も違いますし(太陽から紫外線が入ってくる角度によって変わります)、皮膚の色によってもビタミンDの作りやすさが違います(黒いとビタミンDは作られにくいです)

日本人の成人には食事習慣や緯度、肌の色も考慮すると平均して毎日400IUで十分なのかもしれませんし、それでは足りないのかもしれません。なかなか断定したことは言えないのですが、科学の進歩と共に以前薦められていた事が今は推奨されなかったり、その逆も頻繁にあり得ます。ビタミンDを含む栄養や食事はまさにこれなので、常にいろんな情報に触れて自分にとってより良い選択をすることが重要になってきます

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