脳振盪の影で椎骨動脈解離が起きていたケース紹介:脳振盪を疑ったらすぐに病院へ

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はじめに

今回はレスリング中の怪我で脳振盪と診断された16歳の少年が、その後の検査や症状で実は首の血管(椎骨動脈)が傷付いていたことがわかったケースをご紹介します

脳振盪は頭をぶつけたり、体への衝撃が脳に伝わることで起こり得ます

スポーツでは相手選手だったり地面やボールなどの器具に衝突して起こることも考えられます

ただし、頭をぶつけた=脳振盪とは限りません

もしかしたら脳内で出血をしている可能性もありますし、首の血管などを傷つけているかもしれません

(脳振盪はMRIなどの画像検査を行っても通常であれば脳内に出血は見られません)

ですので、スポーツ中の怪我で脳振盪を疑った場合はすぐに病院に行って検査を受けることが重要です

検査で出血などの異常がなければ脳振盪として治療やリハビリを進め、もし異常があればその為の治療を行なっていきます

では、このレスリング中に怪我をした16歳の少年はどのような状況だったのでしょうか?

この少年のケーススタディーが論文として掲載されていたので、今回はそれをまとめる形でご紹介したいと思います

脳振盪の影で椎骨動脈解離が起きていたケース紹介

・16歳の少年がレスリング中に頭と首の外傷で病院を受診しました

・その時のグラスゴーコーマスケールは15点でした(グラスゴーコーマスケールとは意識レベルを測る指標です。15点満点で計算され、意識レベルに問題があると減点されていきます)

・初期の検査では頭部と首のCT検査も含めて異常は見られませんでした

・ただ、その後に強い吐き気・嘔吐・めまい・頭痛が発生し、脳振盪の症状として入院しました

・10時間後、少年は次第に意識を失い血圧も高くなり、除脳姿勢(じょのうしせい)を取りはじめました(除脳姿勢とは脳に重篤な損傷が起きていることを示唆する姿勢の1つです)

・緊急挿管が行われた後に小児ICUに移され、頭部や血管をチェックするCTやMRI検査が行われました

・その結果、左椎骨動脈が第2頚椎(上から2番目の首の骨)の箇所で解離(血管の膜が破れること)し、且つほぼ閉塞していることがわかりました(心臓から脳に血液を送る血管は主に2つあり、首の前側にある頸動脈と首の骨の間を通る椎骨動脈があります)

・また、この他にも左右小脳や左脳幹の壊死、急性水頭症なども確認されました

・少年は一命は取り留めたものの、脳幹の活動は限定的で話す事は出来ず、身体動作もほぼ行えていないません

さいごに

このケースを紹介した論文では椎骨動脈解離は診断が難しい外傷と記載がありますが、脳振盪と椎骨動脈解離を判別するために適切な画像検査を他の検査と共に行う必要があると説いています

スポーツ現場では頭部外傷で多いのは脳振盪ですが、より重症度の高い外傷(例えば今回の様な首の血管の怪我や脳出血など)も同時に起きている可能性も十分あります

スポーツチームにアスレティックトレーナーなどのスポーツ医学のプロが帯同していればその方の判断に従えばいいと思いますが、そのような方がいない場合は脳振盪を疑った場合はまずは病院や脳神経外科を受診し、脳振盪以外に何も起きていないことを確認しましょう

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました

参照文献

Kumar G, Ludwig B, Patel VV. Vertebral Artery Dissection Masquerading as Concussion in an Adolescent. Pediatr Emerg Care. 2018 May;34(5):e97-e99. doi: 10.1097/PEC.0000000000000847. PMID: 29718002.

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