バッファロー脳振盪バイクテストのやり方

リハビリ

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はじめに

前回の記事ではバッファロー脳振盪トレッドミルテスト(Buffalo Concussion Treadmill Test: BCTT)のやり方はご紹介しました

今回は同じよう内容のテストをフィットネスバイクを用いて行うバッファロー脳振盪バイクテスト(Buffalo Concussion Bike Test)をご紹介したいと思います

このテストは略してBCBTと呼ばれますが、このテストもBCTTと同様にアメリカのUniversity at BuffaloのLeddy医師達が考案した脳振盪患者に対してのテストです

このバイクテストでもトレッドミルを使用して行う場合と目的などは似通ってくるので、前回の記事と重複する部分は多いですが、省略せずに書いていきたいと思います

BCBTのやり方

BCBTの目的

・脳振盪患者がどの程度の運動に耐えられるかチェックする

どの程度の心拍数で脳振盪の症状が悪化するかを特定する

・脳振盪の治療として運動をする際に安全に行える運動強度設定の目安にする

・脳振盪の症状と似たような特徴を持つ他の怪我と鑑別診断する指標となる(首の捻挫などでも頭痛や頸部痛などの脳振盪で起きる症状は発生するので、そう言った他の怪我と判別するため)

・症状の悪化具合や脳振盪患者の回復具合と心拍数などの要素との関係を特定する

注意点

BCBTだけを基準として用いて脳振盪の診断や評価、段階的復帰プロトコルの開始をすべきではない

・BCBTは補助的テストで他の既往や身体的検査と合わせてBCBTの結果は解釈されるべき

BCBTは強い前庭やバランス機能の障害があり、トレッドミル上で安全に歩行を行うのが難しい脳振盪患者の為に設計されている

・BCBTは頭部外傷を受傷してから24時間以内に行うのは勧められず、また患者の症状が強い場合も避けるべき(症状の強さが10段階で7以上の場合は避ける)

絶対禁忌(これらがあった場合はBCBTはやってはいけない)

・急性心筋梗塞、発症から2日以内(Acute myocardial infarction, within 2 days)

・高リスク不安定狭心症(High-risk unstable angina)

・症状や血行動態不全を引き起こすアンコントロールな心不整脈(Uncontrolled cardiac arrhythmias casuing symptoms or hemodynamic compromise)

・症状がある重度の大動脈弁狭窄症(Symptomatic severe aortic stenosis)

・症状があるアンコントロールな心不全(Uncontrolled symptomatic heart failure)

・急性の肺塞栓症もしくは肺梗塞(Acute pulmonary embolus or infarction)

・急性の心筋炎もしくは心膜炎(Acute myocarditis or pericarditis)

・急性の大動脈解離(Acute aortic dissection)

相対禁忌(これらがあった際、リスクよりもBCBTを行う利益が上回れば行う場合もある)

・左冠状動脈狭窄(Left main coronary stenosis)

・中度の狭窄性心膜弁膜症(Moderate stenotic valvular heart disease)

・電解質異常(Electrolyte imbalance)

・重度の高血圧症、収縮期で200mmHgもしくは拡散期で110mmHgを超える場合

・頻脈性不整脈もしくは徐脈性不整脈(Tachyarrhythmia or bradyarrhythmia)

・肥大型心筋症や他の流出路障害(Hypertrophic cardiomyopathy and other forms of outflow tract obstruction)

・高度房室ブロック(High-degree atrioventricular block)

安全への配慮

・テストを行う際は最低1人は心肺蘇生法の訓練を受けている検査者が常時滞在することが推奨される

BCBT中は脳振盪患者と簡単な会話を行うことが重要である。会話の中で脳振盪患者の状態を探ったり、急な口数の減少や顔色の変化などに気づく必要がある

・BCBT中の姿勢にも注意を払う必要がある。特に胸椎や頸椎の姿勢は怪我の状態などを見極める手がかりになる

必要な設備

リカンベントバイクかフィットネスバイクで、パワー出力(ワット数で計算)を検査者がコントロール出来且つ一定に保つことが出来る機種

心拍を計測できるものモニター(ポラール社製の胸か手首のバンドが推奨)

・BCBTアセスメントフォーム(心拍数、症状、パワー出力、RPEなどを記録する用紙)

・BCBT 体重とパワー/出力換算表 (Weight to Power/Watt Conversion Table)

・視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale)

・主観的運動強度(Borg Rating of Perceived Exertion)

・リカバリーのための椅子や水、タオルなど

テスト方法

脳振盪患者の体重を参考に必要なパワー出力を決める(下の資料を参照)

脳振盪患者にテスト方法とBCBT中に予期されることを説明する。脳振盪患者にはテスト中に症状を我慢するのではなく、正直に伝えるように再度促す

視覚的アナログ尺度(VAS)と主観的運動強度(RPE)について説明し、安静時のスコアを得る。BCBT中はこのVASとRPEを2分毎に尋ねられることを伝える

2分間椅子に座ってから安静時の心拍数を計測する

バイクの椅子の高さやハンドルの位置などが適切になっているか確認する。テスト中は立ってバイクを漕ぐことはない

脳振盪患者がバイクに座って漕ぎ始めた直後の心拍数をアセスメントフォームの”Min 0”の心拍数として記録する

脳振盪患者にバイクを60RPM(回転数)±5(55〜65RPM)で漕ぐように伝える。テスト中はおおむね一定のペースを保つように伝える

BCBT開始から2分後にステージ1のパワー出力になるよう調整し、以下の4つを記録する:脳振盪の症状の変化、VAS、RPE、心拍数

2分毎にパワー出力を調整し上記の記録を取っていく

10 BCBT終了基準に達した後は、可能であればステージ0のパワー出力で2分間のクールダウンを行う。クールダウン中では限りなくゆっくり漕いでもらう(おおよそ30RPM)。心拍数、RPE、VAS、その他特記事項を2分のクールダウン後に計測する

11 BCBT終了後は脳振盪患者は静かな環境で休息する。BCBTで症状が悪化した場合はそれがBCBT前と同じ程度になるまで、もしくは同日中の他の予定(リハビリや治療など)を始められると主観的に感じるまで休息する

BCBTの終了基準

1 症状の悪化

視覚的アナログ尺度で3ポイント以上の症状の悪化があった場合、BCBTを終了する。3ポイントは単一の症状が1→4になった場合や、複数の症状が悪化し合計で3ポイント以上になった場合も含む(例:頭痛、めまい、はきけの症状がそれぞれ1ポイントずつ増えた場合、合計3ポイントとなりBCBT終了)

2 疲労困憊

脳振盪の症状の悪化なく主観的運動強度が17を超えた(18以上)場合、疲労困憊とみなしてBCBT終了。もし脳振盪患者が症状の悪化はないものの、年齢による予想最大心拍数の80%に満たない場合(220-年齢)、頑張ってBCBTを続けるように促すが無理強いはしない

※年齢による予想最大心拍数はその脳振盪患者の年齢を220から引くことでわかる。もし25歳であれば、220-25=195となる。この80%の心拍数は195×80%=156となる

3 その他①

急激な症状の悪化、脳振盪患者が朦朧としている、会話が途切れる、その他でBCBTを続けることで健康リスクが高まる場合

4 その他②

脳振盪患者が症状の悪化がなく年齢による予想最大心拍数の90%以上に達しているものの、主観的疲労度(RPE)が異常に低い場合はクールダウンを始める前にRPEに関して正確に理解しているか議論する

5 脳振盪患者からの要望

脳振盪患者はいかなる理由でもBCBTの終了をいつでもリクエスト出来る

解釈

症状が悪化してBCBTを終了した場合、その時の最大心拍数がHeart Rate threshold(最大心拍数閾値:HRt)となる。安全な運動強度はそのHRtの90%未満となる

・症状の悪化が全くなく疲労困憊でBCBTを終了した場合、もし他の原因で競技復帰ができない場合や症状がある場合、有酸素運動に関してはBCBT中に達成した最大心拍数もしくは年齢による予想最大心拍数の85%の強度であれば実施可能

・安静時に症状があるものの、症状の悪化がなく疲労困憊まで運動が出来る脳振盪患者は頸椎や前庭機能、顎関節周辺の機能不全のチェックを受けるべきである

BCBT アセスメントフォーム
参照資料より


BCBT 体重からパワー/出力変換表
参照資料より
主観的運動強度(RPE)
参照資料
視覚的アナログ尺度(VAS)
参照資料

参照資料

Buffalo Concussion Bike Test (BCBT) – Instruction Manual

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