脳振盪に関する声明 by 全米アスレティックトレーズ協会 2024

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はじめに

こんにちわ、爪川です

今日の記事ではNational Athletic Trainers’ Association(NATA: 全米アスレティックトレーナーズ協会)より発表された脳振盪に関する声明について見ていこうと思います

声明の内容は脳振盪に関してアスレティックトレーナーが知っておくべき知識や取るべき対応などのガイドラインが掲載されています

NATAが脳振盪に関して最後に声明を出したのは2014年なので、10年ぶりの声明です。今回の声明は前回の声明内容を修正したり追加した内容となっています

この記事では声明の全てを訳すことは出来ないので、下記の4つの分野に関して、前回の声明内容からアップデートされた部分や重要な部分のみを見ていこうと思います

  1. Education and Prevention(教育と予防)
  2. Assessment Advances(評価の進歩)
  3. Prognostic Factors for Recovery and Persisting Symptoms(リカバリーと症状の遷延の予後因子)
  4. Mental Health Considerations(メンタルヘルスの考慮)

脳振盪に関する声明 by 全米アスレティックトレーズ協会 2024

Education and Prevention(教育と予防)

この分野では2つの事柄に着目しました

1つ目は「脳振盪に関してメディカルスタッフが判断を下す際に、チャレンジを受けない立場にあること」ということを教育する必要があると示しています。

これはつまり、メディカルスタッフが選手を脳振盪と判断して競技をストップさせたり、脳振盪から競技復帰の準備が出来ていないと判断した際に、その判断には選手自身や監督、フロントオフィススタッフなどから覆されない、チャレンジされないという立場や仕組みを作る必要があるとしています

2つ目は運転に関しての教育も含むべきとした点です

脳振盪後では反応速度等も遅くなることから、運転を控えるように言われています

ただ、アメリカの様な車社会などで、そのことが浸透されていないケースもあります

ですので、その部分を脳振盪の教育内容にあらかじめ含むべきと示しています

Assessment Advances(評価の進歩)

この分野では①ベースライン評価、②評価項目、③受傷後の評価、この3つに着目しました

まず①ベースライン評価ですが、ここではアップデートとして「法令や競技団体等の決まりがない限り、毎年のベースライン評価の実施は必須ではない」としています

これは、ベースライン評価の数値がなくとも、受傷後の症状の回復具合等でも十分有益な情報であるということがさまざまな研究によってわかってきたからです

次の②評価項目では認知機能テストの限界ということが言及されています

特にPCを使った認知機能テストのメリットは大きくなく、脳振盪評価のコアを成すべきものではないとしています

最後は③受傷後の評価ですが、ここでは「頚椎」や「前庭、動眼機能」の評価を組み込む様に言われています

また、脳振盪は身体的・社会的・精神的(biopsychosocial)な怪我であり、身体面だけでなく選手の文化的、社会的、精神的な面への考慮も必要としています

Prognostic Factors for Recovery and Persisting Symptoms(リカバリーと症状の遷延の予後因子)

この分野では脳振盪からのリカバリーが遅くなる原因について、2つに着目しました

1つ目はスポーツ現場や医療機関で早く評価や治療を受けた方が、リカバリーも早くなりやすいということです

つまり、脳振盪のような症状を隠したままスポーツを続けた場合や脳振盪受傷後すぐに医療機関を受診しない場合が該当します

また、リカバリーが遅くなる原因としては、脳振盪受傷後の症状の中に前庭・動眼機能の低下が含まれる場合も言及されています

それゆえに、評価の際に前庭・動眼機能を含むことは、早い治療やリハビリが可能になるので非常に大事です

Mental Health Considerations(メンタルヘルスの考慮)

メンタルヘルスに関しては2014年の声明の時には記載がなかったので、全てが新しい文言となります

メンタルヘルスに関しては脳振盪に限らず他の怪我でも重要ですし、特に怪我なくプレイしているアスリートでも重要になってくる部分です

今回の声明内容では、ベースライン時にメンタルヘルスに関する質問を含むことを推奨したり、若年者では脳振盪受傷後に抑うつになりやすい傾向があることを言及しています

参照資料

原著は英語のみですが、原著では前回の声明との違いを比較しているのでわかりやすい印象でした!

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