第6回国際スポーツ脳振盪会議の共同声明⑤:競技復帰プロトコルの改訂

その他

アメリカ産アスレティックトレーナー(ATC)
スポーツ中の脳振盪に関して毎週日曜日にブログ更新中。
脳振盪に関する情報やお悩み解決のお手伝いになれば嬉しいです。

Yoshihiko TKをフォローする

こんにちわ、爪川です

今回の記事でも引き続き第6回国際スポーツ脳振盪会議での変更点について見ていきます

今日は改訂された「競技復帰プロトコル」についてです

競技復帰プロコトルの改訂

競技復帰プロトコル
参照資料1より

競技復帰プロトコルで改訂された部分はいくつかありますが、今回はそこから大きな変化だと感じた2点について解説していきます

まず1つ目は「有酸素運動の強度設定」

そして2つ目は「競技復帰プロトコル内の段階の考え方」です

「有酸素運動の強度設定」

まず最初は「有酸素運動の強度設定」に関してです

今までの競技復帰プロトコルでは、脳振盪のリハビリの第一歩としてバイクなどによる有酸素運動が推奨されていました

しかしながらその運動強度には明確な規定はありませんでした

その運動強度が、今回の競技復帰プロトコルでは明確な指標が示されました

そこでは有酸素運動を年齢から換算する最大心拍数の約55%以下で行うように推奨されています

さらに、55%の運動強度で有酸素運動が実施出来た場合、次は最大心拍数の約70%以下が推奨されています

参照資料1より

この年齢から換算する最大心拍数とは以下の式で計算出来ます

220-自身の年齢=年齢から換算する最大心拍数

ですので、もし20歳の方であれば「220-20=200」なので、年齢から換算する最大心拍数は200、そしてその55%であれば110ということになります

このように、改訂された競技復帰プロトコルでは有酸素運動時の明確な運動強度の指標が示されました

「競技復帰プロトコル内の段階の考え方」

次は競技復帰プロトコル内の段階の考え方です

競技復帰プロトコルは基本的には6段階で構成されています

その6段階は

①症状が出ない程度の活動

②軽い有酸素運動

③スポーツ特異運動

④接触(コンタクト)が起きないスポーツ活動

⑤接触を伴うスポーツ活動

⑥試合復帰

この6段階の構成自体に変わりはありませんが、改訂された競技復帰プロトコルでは①〜③を「脳振盪の治療の段階」として④以降と区別しています

参照資料1より

この区別の狙いとしては2つあり、1つ目は選手がどの段階にいるのかを周りが把握しやすくするためです。今、選手が脳振盪の治療の段階にあるのか、もしくは治療が終了しスポーツ復帰していくためのトレーニングの段階にあるのかをメディカルスタッフだけでなく、周りの人間にも理解してもらうのに役立つと考えられます

2つ目は段階③が終わるまでに脳振盪の症状は消失し、スポーツ活動へ復帰していく為の医師の許可も受けるべきと推奨するためです。段階④では接触は伴わないもののスポーツ活動をしていくので、偶発的に頭部への衝撃が起きてしまうリスクがあります。そういったリスクが少しでもある段階に上がるのであれば、その前の段階で脳振盪の症状は回復しており、医師の許可も受けている状態の方が選手の安全につながります。

今までの競技復帰プロトコルでは、このような競技復帰プロトコル内での考え方はありませんでした。さらに医師の許可も受けるのも段階④から⑤に上がる時でしたので、そのタイミングも異なります

まとめ

本日のまとめです

  • 昨年実施された第6回国際スポーツ脳振盪会議では、脳振盪からの競技復帰プロトコル改訂された
  • 改訂された点の中で重要と考えるのは「有酸素運動の強度設定」と「競技復帰プロトコル内での段階の考え方」の2点
  • 有酸素運動の強度設定では年齢から換算する最大心拍数55%70%が推奨された
  • 競技復帰プロトコル内での段階の考え方では段階①〜③は「脳振盪の治療の段階」として強調され、概ね段階④に上がる前に医師の許可を受けるよう推奨された

参照資料

1 Patricios JS, Schneider KJ, Dvorak J, et al

Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport–Amsterdam, October 2022

British Journal of Sports Medicine 2023;57:695-711.

コメント

タイトルとURLをコピーしました