※この記事は以前noteに掲載した記事です
今日はちょうどラグビートップリーグの決勝戦が行われていました(2021年5月23日)
ラグビーは非常に激しいスポーツなので怪我はつきものですが、その中でも脳震盪は1試合に数件起きるほどのリスクがあります
脳震盪はまだ実態がわからないことが多く、特に脳震盪受傷後から数年や数十年経過した後も脳の機能に影響がある可能性も指摘されています
今回は世界のラグビー統括団体であるWorld Rugbyが2012年から増加傾向だった脳震盪発生件数を低下させる為に行なった施策とその結果をまとめたいと思います
元来、脳震盪を含む頭部外傷はボールキャリアー(ラグビーボールを持って走る選手)に多いと考えられてきましたが、2016年にWorld Rugbyが行った研究ではエリートレベル(各国の代表戦やそれぞれの国での一番レベルが高いリーグ戦など)での頭部外傷のリスクはタックラー(タックルをする選手)の方が高いことが判明しました
この研究を基にタックルの方法、特にタックルを低くすることが頭部への衝撃を減らすと考えられ、その為に以下の3つの施策が考えられました
1 高いタックル(ハイタックル)への処罰を強くする
2 タックルテクニックを改善する
3 タックルに関してのルールを変える
この中で2017年では「ハイタックルへの処罰を強くする」試みが行われました。これは現存のハイタックルへの処罰をより厳格に行うことなどが含まれます
この試みにより2017年では1試合平均のイエローカードやレッドカードが増え、それと同時に2012年から増加傾向だった脳震盪発生率が2017年では上昇しませんでした
ただし、2018年のシーズンではハイタックルへの厳罰化が試合中や試合毎での一貫性がなく、それに対してのメディアからの厳しい指摘もありました
ハイタックルへの厳罰の一貫性の不備を改善する為に、World Rugbyではレフリーなどが反則の判断を行いやすいようにフローチャートを作成、それを2019年7月のU20ラグビーW杯で実施しました
このU20ラグビーW杯での試みは成功し、同じ年の9月に日本で行われたラグビーW杯でも実施されました。W杯を機にこの試みはメディアなどで広がり、ハイタックルへの厳罰の認知度や求められるタックルの高さへの理解が高まりました
そして2019年のW杯では2018年エリートレベルのラグビーの試合のデータと比較して、イエローカードは74%の増加、レッドカードは138%の増加、脳震盪の発生率は28%の低下、タックルによる脳震盪も37%の低下となりました
2016年の研究から始まった脳震盪を減らす施策でしたが、World Rugbyは単なるハイタックルの厳罰化だけでは実は効果は限定的で、その厳罰化を認知してもらう試みやレフリングの一貫性なども総合して行うことが大切だったと結論づけています
まとめ
スポーツに怪我はつきもの、そして脳震盪も残念ながら起こってしまいますが、このような少しずつでも脳震盪を減らす試みは非常に重要です
今回の記事ではWorld Rugbyの施策やその根拠、改善策などが時系列で知ることが出来て非常に有益でした
サッカーでも脳震盪の疑いの選手を一時退場させてチェックするルール変更なども行われており、選手の健康を最大限守ることはこれからも改善されていくと思います
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました
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