競技ルール変更で脳振盪は減らせるか!?高校男子ラクロスの研究を参考に

文献など

アメリカ産アスレティックトレーナー(ATC)
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はじめに

スポーツ中の怪我予防の為の取り組みや施策は今まで様々なものが行われてきました

その怪我削減の効果が実証されたプログラムもあれば、そうでないものもあります

その様な施策の中にはスポーツ中の脳振盪を減らす試みも行われています

例えばヘルメットなどの防具の強化、首周りの筋力の強化、脳振盪になりやすい選手の把握、適切なテクニックの習得などです

そして現状のスポーツのルールを変更することにより、脳振盪に繋がるような危険なプレイを予防する試みも行われています

例えばラグビーでは肩よりも上にある首や頭にタックルをする「ハイタックル」への罰則が厳しくなり、そのようなタックルにならないように技術指導を受けます

そしてタックルをする側も危険なタックルとならない様にタックル技術を磨きます

またアイスホッケーでは身体をぶつけて相手のプレイを邪魔する「ボディーチェック」が行える年齢を引き上げることにより、まだ発達途中の身体への激しい衝突を避けて、脳振盪の数を減らすことに成功したとの研究もあります

このように競技のルールを変更することで脳振盪の数や、脳振盪に繋がる恐れがある危険なプレイを減らすことが可能だと考えられています

今回の記事では高校生の男子ラクロスを対象としたアメリカで行われた研究で、ボディーチェックへのルール変更がどのように怪我の総数や頭部の怪我、脳振盪発生数に影響を与えたかを発表しています

高校男子ラクロスの研究

ルール変更

この研究では全米の高校男子ラクロス部を対象として行われました

それぞれの高校の部活動を管理しているアスレティックトレーナーに怪我の総数や種類のデータを共有してもらい、その結果をまとめたものとなります

アメリカの高校男子ラクロスでは2012年から2014年にかけて2つのルール変更があり、この研究ではその前後で怪我の総数や怪我の仕方、脳振盪の数を比較しています

1つ目のルール変更は頭部への意図的な衝突(ヒット)への罰則の強化です

2つ目のルール変更は反則となるボディーチェックの範囲を広げるものです。防御体制が取れない相手に対してのボディーチェックはこのルール変更以降は反則となります。「防御体制が取れない」というのは、例えば相手の死角からボディーチェックを行うことなどです

結果

・練習時のボディーチェックが原因による怪我の発生率は減少

・練習時と試合時でボディーチェックを行う方の脳振盪発生率は減少

・練習時と試合時でボディーチェックを受けた方の怪我の発生率は減少

・ただし、試合時では2つのルール変更前後で全ての部位を合わせた怪我の発生率に変化はなし

まとめ

ボディーチェックに関してのルール変更に伴い、いくつかの場面で怪我や脳振盪の発生率の減少が見受けられました

ただ、試合時の怪我の総数に大きな変化はなかったとのことから、試合時の怪我はボディーチェック以外の要因が強く関わっている可能性もあります

元の論文には詳細なデータが掲載されていますので、ご興味がある方は記事最後の参照文献よりご覧ください

終わりに

今回は競技のルール変更がどう怪我や脳振盪の発生数低下に関与できるかを明らかにした論文でした

危険なプレイへの罰則強化は長期的に見て怪我予防に繋がると思います(それに関してのラグビーの施策はこちらの記事をごらんください)

この様な研究結果が広まることで、より安全に楽しくスポーツが楽しめ、怪我の発生も予防出来ていければと思います

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました

参照文献

Guillaume S, Lincoln AE, Hepburn L, Caswell SV, Kerr ZY. Rule Modifications to Reduce Checking-Related Injuries in High School Boys’ Lacrosse. J Athl Train. 2021 Apr 1;56(4):437-445. doi: 10.4085/1062-6050-0489.19. PMID: 33878178; PMCID: PMC8063663.

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