はじめに
※この記事は以前にnoteに掲載した物です
こんにちわ、爪川です
今回からは連載で記事を投稿していこうと思います
内容は『スポーツ中の脳振盪後の栄養面からのサポート』
この分野はまだ科学的にはっきりとしたことが言えることは少なく、文献を探しても数は多くありません
私もまだまだ知識不足なので多数の文献をまとめて1つの記事にするのは難しく、よりシンプルに1つずつ文献を読んでその内容をまとめたいと思います
4-5回程の連載が終わった時にそれらをまとめた記事を書く予定です
脳振盪への栄養戦略 ①
初回のブログ記事は下記の文献を参考にしていきます
この記事は研究文献ではなく、アメリカの1つの治療クリニックが行っている脳振盪リハビリと栄養面でのサポートについてまとめた記事です
せっかくですので、栄養面でのサポートも含めて、どのような脳振盪リハビリをしているかもまとめていきます
脳振盪リハビリの内容
呼吸パターンのチェック
全ての患者で呼吸パターンのチェックをします
呼吸は自律神経と心拍変動(Heart Rate Variability)に影響を与えるので年々呼吸パターンのチェックは重要性を増しています
自律神経も心拍変動も機能低下がある場合で運動を行った際に脳振盪の症状が再発しやすい原因となります
患者には横隔膜を使っての呼吸を教えることで痛みの改善、筋肉の張りの低下、姿勢改善、脳震盪の症状が改善する場合もあります
このクリニックでは目やバランス感覚の機能低下があった脳振盪受傷後の患者が、正常な呼吸のトレーニングをしただけでそれらの症状が回復した例もあります
身体の動かし方のチェック
Selective Functional Movement Assessment (SFMA)という考え方を用いて、一人一人の患者の可動域の制限や筋力低下、動きのエラーなどを探していきます
脳振盪の患者の場合は特に首の機能を中心的にチェックします
首回りの感覚や動きのセンサーは目やバランス能力とも非常に強い関係があります
首の機能低下などが合った場合は、マッサージなどで筋肉の張りの改善や関節の動きの促進を促したり、逆に不安定であればトレーニングなどで首回りの筋力強化を図っていきます
ただし、首だけでなく足首や膝の可動性低下によって脳振盪後の症状が治りにくい場合もケースもあるので必ず全身をチェックします
目やバランス感覚のチェック
上記の他にもVestibular Oculomotor Movement Screeningというテストを用いて、目やバランス感覚が正常かどうかもチェックします
患者自身も気づかない視野の減少やバランス能力の低下などがある場合があり、それらの改善を図ります
栄養面からのサポート
このクリニックでは栄養面でのサポートを新しいエビデンス(科学的証拠・根拠)を基にして実施し始めたそうです
脳振盪を受傷する前に”機能的栄養不足” (functional nutrient deficiency)という健康状態であれば、体のバランスが保たれにくくなり脳振盪を受傷するリスクや受傷した後に症状が長引く恐れがあります
機能的栄養不足とは身体が栄養素を吸収できない状態と考えてください(ここはもっと詳しい方がいらっしゃると思うので訂正あれば教えてください)
このアメリカのクリニックではその不足している栄養素を以下としています
亜鉛
マグネシウム
オメガ3脂肪酸
ビタミンD
ポリフェノール
フラボノイド
脳振盪受傷後は脳や神経の機能が低下しますが、その理由は”副次的な代謝の化学反応”(secondary metabolic cascade)に由来する部分が多いです
※補足(副次的な代謝の化学反応は以下を含みます)
glutamate-mediated exitotoxicity (グルタミン酸を媒介した興奮毒性)
intracellular calcium overload (細胞内へのカルシウムの過流入)
mitochondrial dysufunction(ミトコンドリアの機能不全)
creation of reactive oxygen species(活性酸素の生成)
そして脳振盪後に起こるこの”副次的な代謝の化学反応”は他の神経に由来する病気(例えば認知症やALS)の特徴と似ています
それゆえに他の神経に由来する病気に対して行われた栄養面でのサポートの研究なども脳振盪患者に対して有効な場合もあります
以下がこの記事内で言及されている有望な栄養面でのサポートです
・頭部外傷の後にマグネシウム量は急激に低下し、それを補充することでその後の神経系の損傷を予防・改善するケースがある
・リチウムと亜鉛を含んだサプリメントの摂取は脳振盪直後も受傷してから時間が経過した後でも、治癒のプロセスを促し酸化ストレスや炎症の影響を低下させる
・アルツハイマー病やパーキンソン病患者へのケトジェニックダイエット(高脂質での食事方法)は神経を保護する効果がある
まとめ
今回は連載シリーズのはじめとして取り組みやすい文献からはじめました
脳振盪への栄養面からのアプローチは研究も文献も少なくまだまだはっきりとしたことは言えません
ただ、一見健康そうな人でも現代では栄養素が足りていない(食べても吸収できない)というのはよく見聞きします
特に亜鉛やビタミンDなどは数年前からスポーツ界ではよく聞く単語です
4−5年前のアメリカの記事ではアラバマ大学のアメリカンフットボール部という全米で常にトップのチームが選手全員にビタミンDを摂取させているという記事がありました(因みにアメリカのスポーツが強い大学では栄養面でのサポートが物凄く、70名程度在籍するチームに個人別で必要な栄養サプリを毎日渡すサポートをするチームもあります)
もちろん国によって食事内容や文化も違いますし、ビタミンDは緯度による日照時間違いや肌の色とも関係しますので、ただ単純に”他の国がやっているからいいはず”とはいきません
ただし『脳振盪への栄養面でのサポート』は新しい分野でありこの連載をとおして知識を深めていければと思っています
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