米国の大学アメフト選手の脳振盪からの復帰と再発リスクの変遷:1999年と2014年のデータを比較して

文献など

はじめに

脳振盪は日本でもその危険性が認知されてきたと感じますが、アメリカではそのリスクなどは以前から研究されてきました

アメリカの国技の1つであるアメリカンフットボールはその競技特性から非常に強い衝撃を伴い、脳振盪を引き起こすリスクも高くなります

ですので、選手の健康を守るためにも、脳振盪は1シーズンでどの程度の件数が発生し、復帰にはどれくらいかかっており、また再発はどの程度あるのかなどのデータを20年以上前から収集する研究がありました

今回ご紹介する文献は、1999-2000年にかけてアメリカの大学アメリカンフットボール選手を対象とした脳振盪に関しての研究(通称:NCAA)と、2014-2017年にかけて行われたアメリカの大学の学生アスリートを対象とした研究(通称:CARE)を比較したものです

どちらの研究も非常に大規模なものなので、ここでの数字は信頼出来るものだと思います

CAREではアメリカンフットボール以外の選手も研究対象になっていましたが、この比較研究ではアメリカンフットボールの選手のみで1999年の研究と比較しています

比較項目は多岐にわたりますが、ここでは以下の項目を取り上げたいと思います

①脳振盪受傷から復帰までの日数の中央値

②脳振盪受傷後、同じシーズン内での再発率と初回受傷日から再発日までの平均日数

③1シーズン平均の脳振盪発生数

米国の大学アメフト選手の脳振盪からの復帰と再発リスクの変遷:1999年と2014年のデータを比較して

①脳振盪受傷から復帰までの日数中央値

1999年のNCAA研究:3.00日

2014年のCARE研究:12.23日

現在、脳振盪を受傷した選手は段階的なリハビリを行って競技復帰していくことがスタンダードとなっています

ですので、成人では脳振盪受傷から7-14日、子供では30日以内に復帰する場合が多いです

ただ、このような知識やデータも1999年時点でははっきりとわかっておらず、その分脳振盪を受傷してもすぐに競技復帰をしていたというのがこのデータからでもわかります

2014年のCARE研究では、脳振盪に関しての知識が増えたことや啓蒙活動などにより、適切や診断やリハビリを行って回復に必要と思われる日数(12.23日)で復帰していることがわかります

②脳振盪受傷後、同じシーズン内での再発率と初回受傷日から再発日までの平均日数

<同じシーズンの再発率>

1999年のNCAA研究:6.52%

2014年のCARE研究:3.85%

人の体は一度怪我をしてしまうとその部位の耐久性が落ちてしまうことにより再度同じ怪我をしやすくなります(例えばぎっくり腰だったり、肉離れだったり、アスリートに限らず一般の方でも同じ怪我に苦しんでいる方は多いです)

これは脳振盪にも言えることです

一度脳振盪を受傷すると、再度脳振盪を受傷するリスクは高くなります

ですので、脳振盪は適切な診断やリハビリを経て競技復帰していくことが重要です

また、競技復帰した後でも再発を防止するために危険なプレイ(アメリカンフットボールやラグビーで言えばヘルメットや頭からタックルにいくなど)はしない様に技術の向上や、どのような時に脳振盪になりやすいのかなどの知識を得る必要があります

2014年の研究では1999年の研究よりも再発率が低下しています

これは脳振盪に関しての知見が増え、適切な診断やリハビリを経てから競技復帰をする様になったことや、他の再発予防の取り組みによるものだと考えられています

<初回受傷日から再発日までの平均日数>

1999年のNCAA研究:5.59日

2014年のCARE研究:56.41日

これは脳振盪になってから同じシーズンの中で再度脳振盪を受傷した選手の、初回受傷日と再受傷日の間隔の平均日数です

2つの研究でかなり開きがありますが、これも1999年では初回受傷後すぐに復帰していたことや、脳振盪というものがどんなものがはっきりわかっていなかったことが原因の1つと考えられます

③1シーズン平均の脳振盪発生数

1999年のNCAA研究:184

2014年のCARE研究:234

この数字に関しては1つ前置きがあります

1999年の研究では研究期間が1999-2000年の1年間だったのに対し、2014年の研究では研究期間は2014-2017年の3年間です

ですので、2014年のCARE研究の「234」という数字は3年間の脳振盪発生数の合計(701)を3年で割った数字となります

この1999年と2014年の数字だけを見ると、脳振盪の発生数は増加している様に見えます

ただ、本当に増加傾向なのか、もしくは1999年時点では脳振盪であっても見過ごされていたものが多かったのかはこの数字だけではわかりません

私個人の考えとしては、1999年は見過ごされていた脳振盪が多く、逆に2014年は脳振盪についての知識の向上や啓蒙活動によって、脳振盪を発見しやすくなっていることもこの数字の違いにつながっているではないかと思います

終わりに

今回はアメリカの大学のアメリカンフットボール選手を対象とした1999年と2014年の大規模研究を比較した研究を参考にブログを書いてみました

アメリカはスポーツ大国ですが、その分スポーツ医学も発達していますし、スポーツ選手の健康を守るという意識も強い様な気がします(スポーツは楽しむためのもので、健康を害するまでやるものではないというような意識は個人的にアメリカ在住時に非常に感じました)

そのような国でも脳振盪に関して20年前はあまりわかっておらず、この論文からは今ではありえない様な早期復帰なども行われていたように見えます

ただ、そこからどんどん知識や知見が増え、今では適切に現場のアスレティックトレーナーやドクターが脳振盪を適切にマネジメント(初期対応や診断、リハビリなど)するのがどの競技レベル(高校、大学、プロ)でも当たり前になっています

日本でもスポーツチームや学校でもアスレティックトレーナーがいる場所は増えてきていると感じます

その様な場所では脳振盪は適切に対応されると思いますが、そうでない場合は近隣の脳神経外科に診てもらったり、私の方にご相談頂いても構いません

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました

参照資料

McCrea M, Broglio S, McAllister T, Zhou W, Zhao S, Katz B, Kudela M, Harezlak J, Nelson L, Meier T, Marshall SW, Guskiewicz KM; CARE Consortium Investigators. Return to play and risk of repeat concussion in collegiate football players: comparative analysis from the NCAA Concussion Study (1999-2001) and CARE Consortium (2014-2017). Br J Sports Med. 2020 Jan;54(2):102-109. doi: 10.1136/bjsports-2019-100579. Epub 2019 Apr 29. PMID: 31036562.

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