スポーツ中の脳振盪後の下肢運動パターンの変化と怪我のリスク

文献など

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はじめに

脳振盪は脳の怪我の1つなので脳の機能に影響を及ぼします

スポーツ中に脳振盪を受傷した場合、治療やリハビリで自覚症状(頭痛やめまいなど)の解消と脳の機能回復(バランスや心拍数のコントロールなど)を経てスポーツに復帰していきます

一見、スポーツに復帰出来るぐらいまで回復すると、もう脳振盪の影響は無くなったかのように感じますが、最近では脳振盪の影響によって下肢の怪我のリスクが上がるという研究も報告されています

これはつまり、脳振盪によって脳の機能が影響され、身体の動き方が変わり、それゆえに下肢の怪我のリスクが上がっているのではないかと考えられます

今回の記事でご紹介する文献では、脳振盪からスポーツ復帰した選手のジャンプ動作などを解析し、健康なスポーツ選手の動きとの違いを比較しています

スポーツ中の脳振盪後の下肢運動パターンの変化と怪我のリスク

被験者

・脳振盪受傷歴のあるアスリート 21名(全員が脳振盪からスポーツに復帰して60日以内)

・脳振盪受傷歴のないアスリート 21名

実験方法

・30cmの台から飛び降り、そのまますぐに真上にジャンプする(写真参照)

・このジャンプ動作を行う際、骨盤と下肢に3Dモーションキャプチャーのモニターを装着し、下半身の動きを計測する

結果

・脳振盪受傷歴のあるアスリートはそうでないアスリートと比較し、両膝共に外反傾向で着地し、さらに膝の曲がる角度は浅い傾向があった(着地時に脚がX脚になる様な力が加わり、且つ膝をあまり曲げないで着地している)

まとめ

脳振盪を受傷した選手はそうでない選手と比較し、脳振盪から復帰後に下肢の怪我のリスクが高くなるという報告があります

下肢の怪我のリスクが高くなる原因はまだ解明されていませんが、今回の文献では脳振盪後にスポーツ復帰を無事に果たせたとしても、身体の動かし方に変化がある可能性を示唆しています

また、この研究で見られた「膝の外反傾向と浅い膝の曲がりでの着地動作」は、他の多くの研究で下肢の怪我のリスクを上げる動かし方とされています

これらのことから、脳振盪受傷後には治療やリハビリを経て無事にスポーツ復帰を果たしたとしても、”隠れた脳の機能低下や動きの変化”が残存している場合があり、それらをテストやトレーニング中に注意深くチェックして改善していく必要性を示唆していると思います

今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました

参照文献

Brooks MA, Peterson K, Biese K, Sanfilippo J, Heiderscheit BC, Bell DR. Concussion Increases Odds of Sustaining a Lower Extremity Musculoskeletal Injury After Return to Play Among Collegiate Athletes. Am J Sports Med. 2016 Mar;44(3):742-7. doi: 10.1177/0363546515622387. Epub 2016 Jan 19. PMID: 26786903.

Lee BJ, Blueitt D, Hannon J, Goto S, Garrison C. Movement Patterns During a Jump-Landing Task in Athletes After Sport-Related Concussion and Healthy Control Individuals. J Athl Train. 2021 Dec 1;56(12):1306-1312. doi: 10.4085/533-20. PMID: 34911071; PMCID: PMC8675309.

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